小娘のつれづれ

一人で自分の”好き”を追いかけ続け、執筆業になりました。2017年に初の著書『SMAPと、とあるファンの物語 -あの頃の未来に私たちは立ってはいないけど-』(双葉社)がでました。



2017年9月発売の『SMAPと、とあるファンの物語』(双葉社)については【こちら】

「アイドルはなぜインターネットに「ホンネ」を預けたのか」

執筆のお仕事をさせていただくようになった頃から、ときどき「アイドルの帰る場所って一体どこなのだろう」と考えることがあります。
ミュージシャンや俳優を導くのは突出した才能です。芸人を形作っていくのは板の上という勝負の舞台とそこにあるプライドです。
でもアイドルの始まりには、突出した才能も、身を切るような覚悟もあまり必要とはされていません。
アイドルと呼ばれる人たちが芸能界のような才能の大海で”身一つ”であることに気づくのは、ほとんどがステージに立ってしまった後なのではないでしょうか。
そしてスターアイドルの運命の元に生まれてしまった人ほど、それに気づいてしまった時の恐怖は、いかばかりかと思ってしまうのです。


「アイドルの帰る場所」を考えるときに、思い出す2つの言葉があります。
1つはかつて自分の耳で聞いた、木村拓哉さんの”弱音”です。

「20年、楽しい事もありえない経験もさせてもらったけど、頭抱えたことも、腐りそうになった事もあった。好き勝手言われたり、変なこと書かれたり…でもいつも皆が背中を押してくれたから、やってこれた」*1

もう1つはDVDに収録されていた、香取慎吾さんのことばです。

「やっぱり歌を歌って踊りを踊る”アイドル”だから。それこそ原点じゃないけど、(ライブは)僕らの本当の居場所」*2

木村さんは2012年、香取さんは2014年、これらの発言があったのはいずれもSMAPが開催していたライブツアーの中でした。
あれだけ芸能界の第一線で活躍し続けた国民的アイドルグループ・SMAP、しかし誰もが知っているはずのスーパースターは弱さも見せられる本当の居場所を、テレビではなく、ずっとライブという空間に求めていたのです。
身一つで飛び出した彼らの弱さも強さも、いつも変わらずに受け入れ見守ってくれる人たちが待っていた”帰れる場所”。
しかし周知のとおり、SMAPは2016年を最後に、それぞれが一度新しい道を進むことになりました。
そして沢山の悲しみや苦しみとともに、全ては一度ゼロになりました。


時は流れ2017年9月下旬、前事務所を離れた稲垣さん、草彅さん、香取さんの3人が「ホンネテレビ」と題したインターネット番組をやると発表した時、「ホンネ」のその意味を考えた人は少なくないと思います。
そして実際に訪れた72時間の生放送が最後まで映し出していたのは、弁解の言葉等ではなく、リアルタイムでとにかくがむしゃらに未知のことに挑戦していく姿、身一つでこの世界に生まれ落ちたアイドルという生命そのものでした。
番組を実際に72時間見終わった今思うのは、「ホンネ」とは2017年の3人にとって最後に残された居場所の可能性であり、スタート地点を意味する言葉だったのではないか、ということです。
決して本意ではない形とはいえ、自分たちの決断によって多くのものが失われてしまった現状、今の彼らを同じ芸能の世界に踏みとどまらせた意味は、存在を必要としてくれるその声にしかもうなかったのかもしれません。
だからアイドルの彼らはその声に最も近い「インターネット」に自らを限界まで晒すことで、失われた全てのものを越えて、変わらぬ”居場所”に今度は自分から直接橋を架け始めた。
その先に一人でも待ってくれる人がいるならば、言えない言葉や歌えない歌がある現実も思いも全て受け入れながら、アイドルの彼らは新しい明日に臆せず飛び込んでいける。

今回の「ホンネテレビ」は2017年の今日まで30年身一つでやってきた彼らだからこそ生みだせた新たな時代の始まりだったなと、視聴者でありSNSを通じた目撃者でもあった私は一人思うのです。
そして結果的に傷すらのみこんで総視聴数7200万以上という大規模エンターテインメントの一つにしてみせてしまった彼らは、やっぱり凄い。


最後に、「72時間ホンネテレビ」のエンディングでは出演者や視聴者による沢山の応援コメントとともに、彼らと同じ運命の元に生まれた”もう1人の仲間”からのメッセージも放送されました。

「慎吾ちゃん、つよぽん、吾郎ちゃん。浜松オートレース場にわざわざ応援しにきてくれて、どうもありがとうございました。3人が頑張って新しい地図に新しい絵を描いているところが見れて、とても嬉しかったです。とにかく、これから、頑張っていきましょう。ずっと、ずっと、仲間だから、応援しています」

身一つで生まれ落ちたからこそ自分の本当の夢に気づき、21年も前からたった一人で走り続けていた森且行さん。
そんな彼の言葉を聞いて、今までテレビでは顔を崩して泣くような姿を一度も見せなかった稲垣さんが、初めて視聴者の前でこらえきれずに、大きく表情を崩して泣いていました。
そしてその直前のライブを見る限り、今回の3人の溢れる想いは、決して再会できた森さん1人だけに向けられていたようには思えませんでした。

たとえどれだけ長い時間会わずとも、言えない言葉や歌えない歌が行く手を遮ろうとしても、「仲間」とは毎夜輝く星のようにいつまでも互いの道を照らしてくれるものなのだということもまた、私が偶然目撃して知れたその一つです。


関連リンク
新しい地図:新しい地図
稲垣吾郎 公式Twitter:稲垣 吾郎 (@ingkgrofficial) | Twitter
草彅剛 公式Twitter:草彅 剛 (@ksngtysofficial) | Twitter
香取慎吾 公式Twitter:香取慎吾 (@ktrsngofficial) | Twitter

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お仕事のご依頼は→ drifter_2181@outlook.jp
※お仕事以外のご相談は全てお断りしております、あらかじめご了承ください

*1:「GIFT of SMAP -CONCERT TOUR 2012-」12/24 札幌公演

*2:ツアーDVD『Mr.S saikou de saikou no CONCERT TOUR』

「稲垣、草彅、香取の新プロジェクト「 #新しい地図 」から見える私たちの世界」

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*1

10月16日、かねてより発表されていた稲垣吾郎さん、草彅剛さん、香取慎吾さんによるプロジェクト・新しい地図の活動が本格的にスタートしました。

さっそく発表となったのは公式サイトでの「#ぷっくりニュース」なるユーザー参加型の新メディア、そして『クソ野郎と美しき世界』と題された映画の制作です(来春公開予定)。

長い沈黙を経てのこれらのニュースはファンだけでなく様々な場所で反響を呼んでいますが、注目したいのは、新設されたファンクラブの名前にも用いられているように彼らが「NAKAMA」という存在を何よりも大事にしているということ。

公式サイトにある「新しい地図は皆さんと一緒につくる集いの場所」という言葉とこれまでの3人の所属グループ・SMAPの活動から読み解けば、「NAKAMA」とはファンクラブの会員はもちろん、日常生活で彼らの活動を目にし、そこに応援する気持ちを持っていたすべての人を指す言葉のようにも感じます。


”異様”だった2016年の解散報道

「公開処刑」と表現されたテレビでの謝罪から早1年10か月が経とうとしていますが、今思い返せば、2016年のSMAPを取り巻く解散報道は”異様”とも表現したくなるような光景でした。

活動が滞り始めたSMAPを画面越しに目撃して「不仲ではないか」と推測するのはまだ穏やかな方で、「異業種に転身する」「渡米する」「芸能界を引退する」、果ては「自殺」の言葉を大きく取り上げたメディアもありました。

しかし結果的に、これらの報道は一つとして事実にはなりませんでした。

「新しい地図」の面々と同じSMAPメンバーの一人である木村拓哉さんはかつて、一般人とのプライベートの時間に踏み込んで撮影を強行した週刊誌のカメラマンにその意味を問いかけたところ、「あなたは公人だから僕たちは撮る権利があります」と返されたと著書で振り返っていたことがあります。

このやりとりがあったのは1994~95年頃、もう20年以上も昔の話です。

しかしこれだけ時が進み、個々の人権を守ろう、尊厳を大切にしようという声が世間的にも高まってきている中、SMAPは今もなお進行形で「自殺」の憶測までその名に直接浴びせかけられていました。

そして渦中の5人は2016年12月31日の解散まで、ついに反論をすることはありませんでした。


2016年のSMAPを支えていたもの

行き過ぎた報道が日常的に繰り返されたあの時期、何も言えぬ彼らをずっと支えたのは、やはりファンの存在だったのではないでしょうか。

前事務所を退社し新しい一歩を踏み出した稲垣さん・草彅さん・香取さんの3人が、どこにも一切情報を漏らすことなく、新聞広告で支えてくれた”仲間”へ真っ先にメッセージを伝えたことは記憶に新しいと思います。

「ファンの方々からいただいた温かい言葉・応援の数々に3氏がどれほど助けられたか計り知れないものがあり、その感謝の気持ちをファンの方々に伝えることを何よりも優先したいとの、3氏たっての希望によるものです」
(9月22日、「新しい地図」の新聞広告発表に際し仕事の窓口となっている担当弁護士のコメント)


そして引き続き事務所に残った木村さん、またSMAPのリーダー・中居正広さんも、かつて2016年12月に放送されたSMAPとしての最後のレギュラーラジオではこんなことを口にしていました。

「たくさんの署名をいただいたりとか」「全てのことに対して最後に一言だけ、”ありがとう、SMAP”」
(「木村拓哉のWhat’s UP SMAP!」2016年12月30日)

「”37万人以上の署名運動”とか、”『世界に一つだけの花』購買運動”とか、ベストアルバムへの投票とか、SMAPのCD25周年に各地でそれぞれのイベントをしてくれてたこととか、新聞の広告欄にメッセージをくれていることとか等々……全ての思いがちゃんと届いています」
(「中居正広のSome girl' SMAP」2016年12月31日)


無言を貫き自ら一度その活動の幕を閉じることとなった2016年、それでもアイドルグループ・SMAPは、支えてくれた人たちへの感謝の気持ちを全員が等しく共有していました。

年齢を重ねても変わらずに30年に渡り夢や希望を表現し続けた「偶像」、それを不本意な形で失いかけた2016年の彼らにとって、アイドルとしての矜持を取り戻させたのは、やはりファンと呼ばれる誰かの良心でした。


「信じていれば、どこかできっと会える」

10月16日に公開された公式映像にはついに稲垣さん、草彅さん、香取さんの3人が登場し、新しい地図のコンセプトを表現しています。



先だって新聞広告で公開されたビジュアルイメージの澄んだ青空とは異なり、彼らがいるのは煙や厚い雲に覆われた世界です。

まだ前事務所を辞めてわずか1ヶ月の段階で公開されたこの映像が映し出しているのは、自分ではコントロールできないものに一度覆いつくされてしまった真っ暗な世界の中で、それでもメッセージに共鳴してくれる他者を信じて今まさに身を委ねようとしている、そんな決断の姿のようにも思います。

新しい環境に飛び込むとき、誰しもが「受け入れられるだろうか」「成功できるだろうか」という不安や恐れを抱かずにはいられません。

それでも大きな挫折を経験した国民的スターが長い苦しみを乗り越え、他者の良心を信じて未来へと踏み出したその勇気は、何よりもこの時代に必要な、私たちが新しい明日を迎えるためのきっと大きい一歩だと思うのです。


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新しい地図

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*1:キャプチャ / Youtube「新しい地図 本格始動」https://www.youtube.com/watch?v=1qcn0Yrj6TI