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【無料】ガールグループとは何か① テレビ時代の輝き

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ガールグループとは何か

①テレビ時代の輝き

The Shirelles『Will You Love Me Tomorrow』


www.youtube.com

学校で行われるタレントショー(文化祭的イベント)に出演するために高校の同級生4人で結成したシュレルズは、あのチョリー・アトキンスの教え子となり、そして1961年、『Will You Love Me Tomorrow』で黒人女性コーラスグループとして史上初の全米1位獲得という快挙を成し遂げた。
現代ではシュレルズ『Will You Love Me Tomorrow』が大ヒットした1960年代初頭あたりから、同様の女性グループがコーラスグループではなく「ガールグループ」にカテゴライズされるようになっていくのが定説である。

そう言われてみると確かに、現代のガールグループの共通イメージは、この1960年代初頭にアメリカで大活躍した女性グループたちの特徴とおおむね一致していた。
例えばそのまま、シュレルズ『Will You Love Me Tomorrow』のステージである。
曲の始まりからすでに、リードボーカルは少し離れて一人、バックコーラス担当のメンバーはまとまって三人と、ドゥーワップブームを経て普及した「リードボーカル+幅広い役割を担うバックコーラス」スタイルが視覚的にもはっきり表現されている。
そしてリードボーカルが主旋律を歌い始めると、他のメンバーはコーラスと併行して、時にWill youで外側を、そしてlove meで自分を指すなどというように、歌詞の内容と連動した振付を披露していく。
またそれだけに留まらず、シュレルズの場合は1950年代までのコーラスグループよりもさらに踏み込む形で、リードボーカルのソロパートが続くシーンになるとバックコーラス担当のメンバーがマイクから離れ、時には背も向けてまで、揃いの振付で観客を楽しませているのだ。
彼女たちが従来の女性コーラスグループではなく女性によるポップミュージックのボーカルグループ、つまり別枠の「ガールグループ」に分けられていく流れは、ドゥーワップブームから派生したこのダンスの“異質感”が、1950年代から1960年代をまたいだ人々の間で強く作用したのだろうと推測される。

考えてみると、密接かつ横一列なコーラスワークが特徴的だったボズウェル・シスターズアンドリュース・シスターズの時代は、主戦場がヴォードヴィルやブロードウェイのステージ、トーキー映画、ラジオであり、そのパフォーマンスは「集まった大勢の観客が一斉に視聴する」ことが第一条件だった。
となると、やはり彼女たちのエンターテインメントには歌もダンスも、さらには衣装も髪型も揃えて、一糸乱れぬシンクロの迫力を磨き上げる理由があった。

しかしアンドリュース・シスターズのファーストキャリア末期にあたる1950年時点でわずか9%だったアメリカのテレビ普及率は、エルヴィス・プレスリーのブレイク前夜である1955年には64.5%、そしてシュレルズのブレイク前夜である1960年には87.1%まで達している。
この時点でもはや、エンターテインメントのメインストリームは決定的に「家族などの少人数、あるいは一人で見る」方へ引き寄せられていた。

つまりコーラスグループと一線を画すガールグループのダンス・フィーチャー、そこにあった演出意図はまさに「テレビ時代の輝き」だったのである。


(この記事はここまでが全文の、実質的無料記事です)


参考文献:*1
note.com

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drifter-2181.hateblo.jp

*1:※編集の都合上、こちらのみ、noteリンクでの掲載にさせていただきます

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