01.LOVEマシ-ン(updated)
いきなりこれ。
説明するまでもないモー娘。最大のヒット曲である。
特筆すべきは「工藤遥(10期)がスゴい!」
当時26歳の中澤裕子(1期)が担当していた、Bメロのお色気ワード3文字。
updated.verでも1番はそれこそ、現モー娘。のセクシー担当である譜久村聖(9期)が情感たっぷりに歌いあげているが、2番のパートを任された工藤の歌は、違うのである。
ざらつきと湿っぽさの部屋で味わう温度低めのビターチョコレートのような「あらわ」!!
歴戦のモー娘。たちが自らのみずみずしい少女声を持て余し、語尾の「…ぁあ~ん」を強調する事でなんとなくごまかしてきたこのお色気パートを、ラブマ発売後に生まれた工藤遥は、自らの売りである”ハスキーボイス”で真っ向から挑んだのだ。
あの3文字の世界観、はっきりいって中澤裕子以来14年ぶりの「正解」である。
この工藤はもっと評価されるべき!!
その他、当時プッチモニブレイク前夜だった市井紗耶香(2期)のパート「じゃない?」が現モー娘。では鈴木香音(9期)に行ってるのが面白い。
(当人の歌唱こそ新しい解釈だが、なんとなく声の質感が、意外に似てる気がする)
あとよく聴いてると、初期モー娘。の楽曲を支えた保田圭(2期)の「未来に」も鈴木に行っている。
02.I WISH(updated)
続いてこの曲。
オリジナルは当時新加入の4期メンバー(石川梨華・吉澤ひとみ・辻希美・加護亜依)と、エースで同世代の後藤真希(3期)がフィーチャーされた曲である。
updated版でもそのコンセプトは継承されており、この曲は近年加入した9~11期だけの歌唱になっている。
updatedの序盤は加入順にパートが割り振られていったようで、オリジナルで最年少の加護亜依(当時12歳)から始まったパートが、今回は現在最年少の工藤遥(13歳)から始まるようになっている。
期待と未知への不安が惜しみなく表現された加護の歌声はそれはもう胸を打つ代物だったが、今回の自信と幼さが同居する瞬間の工藤の歌声も、これはこれで素晴らしい。
しかもupdated.verは、その後同じく最年少コンビの佐藤優樹(10期・14歳)に繋がるのである。
この世界観と、13年におけるモーニング娘。のバックストーリーが同時に頭を駆け巡ると、もう泣かざるをえない。
さらに、大サビ前のパート「晴れの日があるから~」も、オリジナルでは1・2期(先輩メン)と4期(新メン)がそれぞれ左右に分かれて立ち、その間に後藤真希(3期)と中澤裕子(1期・当時最年長)がハブ的ポジションで立っているという構図があるのだが、今回のupdated.verでは、9期4人・10期4人が参加しているこの楽曲のハブ的ポジションに小田さくら(11期・1人加入)が立っている。
これも地味ながら、熱いパート割。
(あとどうしても書いておきたいのが、前述の”加入順パート割”により、石川梨華の「メール」パートが生田衣梨奈(9期)にいったのも奇跡である)
03.恋愛レボリュ-ション21(updated)
04.ザ☆ピ~ス!(updated)
この2曲に関してまず先に言っておきたいのは、これはさすがにupdateできない。
それほど世間のムード、当時のメンバーのスター性も含めたオリジナルがとにかく完璧すぎるのだ。
しかしモーニング娘。がここまで続いた事により、現在のグループを引っ張る9~11期はこれらの楽曲をまだこれから何年も、何百回も歌う事になるわけで、それを考えると、ここで「17年目以降の恋レボ」「17年目以降のザ・ピース」を用意するのは至極真っ当な選択に思う。
ここ数年、アイドル界隈でも有志による既存曲のremixやmashupが秘かに盛り上がっており、そういうものと聴き比べる、公式の題材提供みたいなポジションで味わうのも楽しい。
やはり何度聴いても、ザ☆ピ~スの「選挙の日って…」からのたたみかけは奇跡。
05.そうだ!We're ALIVE(updated)
オリジナルが発売されたのは2002年、早い所だとすでに”モー娘。ダサい”の風潮が出始めていた時期で、真っ当に評価を受けられなかった作品*1の1つである。
同じ素材を、どちらかというと自らのスター性で押し切ったオリジナルに対し、updated.verは歌唱の節々が、グループ自体のスキルが底上げされている事を如実に物語っている。
この「そうだ!We're ALIVE」は他にも聴き比べ素材がいくつか存在する。
1:オリジナルver
2:後年評価された『プラチナ期』ver
3:今回のupdated.ver
この3つを続けて視聴するだけでも、17年続くモーニング娘。の面白さがすごくよくわかる。
(ちなみにこの曲の肝である「努力 未来 A BEAUTIFUL STAR」でも、鈴木香音の声がちょっと多めに聴こえる)
06.THE マンパワー!!!(updated)
オリジナルは2005年の作品。
この頃になるとモーニング娘。はすっかり落ち目のアイドルとして扱われており、当時創設された東北楽天ゴールデンイーグルスと共に、まさか、8年後トップを勝ち取っているとは誰にも思われていなかった。
2005年当時、初期のエースだった安倍なつみ(1期)や後藤真希(3期)などはすでに卒業しており、この曲では在籍5年の吉澤ひとみ(4期)と4年の高橋愛(5期)が、重要なシャウトフレーズを任されている。
そのパートをupdated.verでは在籍2年の鞘師里保(9期)と1年の小田さくら(11期)が担当しているのだが、特に、歴代モー娘。の中でも屈指の歌唱力を誇った高橋愛のパートをまだ加入から1年しか立っていない、しかもまだ14歳の小田が、完璧に追随できているのが面白い。
ちなみにこのupdated.ver、気持ち悪くなるほどのつんくコーラスの洪水である。
(つんくヲタ必聴)
07.歩いてる(updated)
オリジナルは2006年。
この曲はかねてより、オリジナルverも参加している現リーダーの道重さゆみ(6期)が「好き」と常々公言しており、満を持してのソロ抜擢となった。
オリジナルではソロパートどころかユニゾンでもその声を探し出すのが難しいポジションだったが、『Perfume担当』から始まった道重さゆみの伝説は、苦楽を共にした当時の在籍メンバーの思いも乗せて今、ここに息づいているのである。
08.恋愛ハンター(updated)
ここからは9~10期加入後のupdated.verが続く。
この曲のオリジナルは新垣里沙(5期)、田中れいな(6期)、光井愛佳(8期)が参加している。
(新垣・光井にとってはラストシングル、11期の小田は加入前)
割と最近の曲(2012年発売)であり、何をupdateするのだろうと思っていたが、これはこれでかっこいい!
(つんくP曰く「12インチシングルヴァージョンのようなイメージ」との事)
オリジナルはダブステップの曲調とセンターポジションを務めた新垣の相性の良さ、そしてところどころでクールな風を吹き込む田中れいなの声が非常に特徴的だったが、たった数人入れ替わっただけで、updated.verは全く別のものになっている。
これをスタートとして、4年くらいすると同じメンバーでもまた聴こえ方がガラっと変わってくるのがモーニング娘。の面白い所である。
09.One・Two・Three(updated)
モー娘。再ブレイクの扉を開いた、渾身の50thシングル。
発表当時は歌エース・田中れいなが現役、またほとんどの9~10期はスキルが追いついていなかった事もあり、基本歌唱に関しては田中れいなと鞘師里保の2人が目立つ歌割となっていた。
しかしそれから1年、9~10期、そして後に加わった11期は驚くほどの成長を見せ、あっという間にグループは田中れいなの不在をものともしないパフォーマンスができるようになっている。
元々恋愛ハンターに比べると、現グループの声には123の方が明らかに向いており、経緯的にも、この曲が今後9~11期体制の代表曲として歌い継がれていくのだろう。
さらにいえば、この曲もまだまだ成長の幅を残しており18~20歳くらいになった彼女たちは一体どんな風にこの曲を歌い踊っているのかを想像すると、末恐ろしさすら漂う。
10.ワクテカ Take a chance(updated)
One・Two・Threeに続くEDM路線。
この曲が123から少し売上を落としたのは、おおかた歌衣装が少し内輪向けだった所に要因があって、基本的にはもっと評価されてもいい楽曲である。
あと鞘師の声質には、現時点ではこの曲が一番合っているのではないだろうか?
11.Help me!!(updated)
オリジナルは3年8か月ぶりのオリコン1位獲得、ついに小田さくら(11期)も加入。
ヒョウ柄猫耳衣装を完璧に着こなしていた田中れいなの存在感は唯一無二であったが、その記憶をファンの中だけに留めて突き進む、それがモーニング娘。というグループなのだと、また1つ噛み締める。
12.ブレインストーミング(updated)
この曲はすでにテレビで、田中れいな卒業後の現体制によるパフォーマンスを披露している。
個人的にはあの出演が、モー娘。再ブレイクの号砲だったように思う。
drifter-2181.hateblo.jp
13.君さえ居れば何も要らない(updated)
この曲の肝は、ずばり「田中れいなのパートが佐藤優樹に受け継がれている所」。
この時描いていた未来は、少しずつ、そして確かに、現実の佐藤優樹の方を向き始めている。
14.わがまま 気のまま 愛のジョーク
drifter-2181.hateblo.jp
15.ウルフボーイ
今回唯一の新曲。タイトル的に、一部ではかなり盛り上がっていた。
「ダンスパフォーマンスを想像しながら歌詞を書きました」との事だが
「見えない所でコソコソやらないで」「途中でコロコロ変えたりし過ぎだね」などやっぱり意味深な歌詞も飛び交う。
曲中おっさんがずっと「ウルフボーイ」連呼してるのでおっさんヲタはヘッドホンで味わおう。
<総評>
聴いていて一番気持ちがいいのは、全般的に「遠慮がない」ことである。
やはりこの10年、黄金期モー娘。の威光はハンパなかった。
それに一番苦しんでいたのは、他でもないモーニング娘で、多分前世代(という書き方にもうなりつつあるのか)の5~8期世代はバトンを渡された時期が黄金期のすぐ後だったことも相まって、いつもどこか、その壁に悩まされていたように思う。
その壁と真摯に向き合った結果、彼女たちは1から新しいモーニング娘。を再構築し、その功績は後に”プラチナ期”と呼ばれるようになるわけだが、じゃあその次の世代、現モーニング娘。は?というと、
「過去のモーニング娘。に真っ向から戦いを挑み始めた。」
このアルバム、誰の声を聴いててもなんら迷いがない。ためらいがない。
むしろ勝負を楽しんですらいる。
これを「モーニング娘。」ができるようになったのは、16年経っていよいよデビュー当時のグループを覚えていない世代がモーニング娘。になった強さ、そして、そこまで繋げた34人の女性の執念のケミストリー 、でもある。
ついに、黄金期を恐れないモーニング娘。が生まれつつあるという事が、この『The Best!~Updated モーニング娘。~』という作品なのだ。
これは、はっきり言って「宣戦布告」である。
<MUSIC STORE>
*1:2023.10追記:後の2022年、米津玄師が自身の楽曲「KICK BACK」に「そうだ!We’re ALIVE」のフレーズを使用したことで、同曲は20年越しの再評価を受けました