小娘のつれづれ

一人で自分の”好き”を追いかけ続け、執筆業になりました。2017年に初の著書『SMAPと、とあるファンの物語 -あの頃の未来に私たちは立ってはいないけど-』(双葉社)がでました。

「アイドルはなぜインターネットに「ホンネ」を預けたのか」




執筆のお仕事をさせていただくようになった頃から、ときどき「アイドルの帰る場所って一体どこなのだろう」と考えることがあります。
ミュージシャンや俳優を導くのは突出した才能です。芸人を形作っていくのは板の上という勝負の舞台とそこにあるプライドです。
でもアイドルの始まりには、突出した才能も、身を切るような覚悟もあまり必要とはされていません。
アイドルと呼ばれる人たちが芸能界のような才能の大海で”身一つ”であることに気づくのは、ほとんどがステージに立ってしまった後なのではないでしょうか。
そしてスターアイドルの運命の元に生まれてしまった人ほど、それに気づいてしまった時の恐怖は、いかばかりかと思ってしまうのです。


「アイドルの帰る場所」を考えるときに、思い出す2つの言葉があります。
1つはかつて自分の耳で聞いた、木村拓哉さんの”弱音”です。

「20年、楽しい事もありえない経験もさせてもらったけど、頭抱えたことも、腐りそうになった事もあった。好き勝手言われたり、変なこと書かれたり…でもいつも皆が背中を押してくれたから、やってこれた」*1



もう1つはDVDに収録されていた、香取慎吾さんのことばです。

「やっぱり歌を歌って踊りを踊る”アイドル”だから。それこそ原点じゃないけど、(ライブは)僕らの本当の居場所」*2



木村さんは2012年、香取さんは2014年、これらの発言があったのはいずれもSMAPが開催していたライブツアーの中でした。
あれだけ芸能界の第一線で活躍し続けた国民的アイドルグループ・SMAP、しかし誰もが知っているはずのスーパースターは弱さも見せられる本当の居場所を、テレビではなく、ずっとライブという空間に求めていたのです。
身一つで飛び出した彼らの弱さも強さも、いつも変わらずに受け入れ見守ってくれる人たちが待っていた”帰れる場所”。
しかし周知のとおり、SMAPは2016年を最後に、それぞれが一度新しい道を進むことになりました。
そして沢山の悲しみや苦しみとともに、全ては一度ゼロになりました。




時は流れ2017年9月下旬、前事務所を離れた稲垣さん、草彅さん、香取さんの3人が「ホンネテレビ」と題したインターネット番組をやると発表した時、「ホンネ」のその意味を考えた人は少なくないと思います。
そして実際に訪れた72時間の生放送が最後まで映し出していたのは、弁解の言葉等ではなく、リアルタイムでとにかくがむしゃらに未知のことに挑戦していく姿、身一つでこの世界に生まれ落ちたアイドルという生命そのものでした。

番組を実際に72時間見終わった今思うのは、「ホンネ」とは2017年の3人にとって最後に残された居場所の可能性であり、スタート地点を意味する言葉だったのではないか、ということです。
決して本意ではない形とはいえ、自分たちの決断によって多くのものが失われてしまった現状、今の彼らを同じ芸能の世界に踏みとどまらせた意味は、存在を必要としてくれるその声にしかもうなかったのかもしれません。
だからアイドルの彼らはその声に最も近い「インターネット」に自らを限界まで晒すことで、失われた全てのものを越えて、変わらぬ”居場所”に今度は自分から直接橋を架け始めた。
その先に一人でも待ってくれる人がいるならば、言えない言葉や歌えない歌がある現実も思いも全て受け入れながら、アイドルの彼らは新しい明日に臆せず飛び込んでいける。


今回の「ホンネテレビ」は2017年の今日まで30年身一つでやってきた彼らだからこそ生みだせた新たな時代の始まりだったなと、視聴者でありSNSを通じた目撃者でもあった私は一人思うのです。
そして結果的に傷すらのみこんで総視聴数7200万以上という大規模エンターテインメントの一つにしてみせてしまった彼らは、やっぱり凄い。




最後に、「72時間ホンネテレビ」のエンディングでは出演者や視聴者による沢山の応援コメントとともに、彼らと同じ運命の元に生まれた”もう1人の仲間”からのメッセージも放送されました。

「慎吾ちゃん、つよぽん、吾郎ちゃん。浜松オートレース場にわざわざ応援しにきてくれて、どうもありがとうございました。3人が頑張って新しい地図に新しい絵を描いているところが見れて、とても嬉しかったです。とにかく、これから、頑張っていきましょう。ずっと、ずっと、仲間だから、応援しています」



身一つで生まれ落ちたからこそ自分の本当の夢に気づき、21年も前からたった一人で走り続けていた森且行さん。
そんな彼の言葉を聞いて、今までテレビでは顔を崩して泣くような姿を一度も見せなかった稲垣さんが、初めて視聴者の前でこらえきれずに、大きく表情を崩して泣いていました。
そしてその直前のライブを見る限り、今回の3人の溢れる想いは、決して再会できた森さん1人だけに向けられていたようには思えませんでした。


たとえどれだけ長い時間会わずとも、言えない言葉や歌えない歌が行く手を遮ろうとしても、「仲間」とは毎夜輝く星のようにいつまでも互いの道を照らしてくれるものなのだということもまた、私が偶然目撃して知れたその一つです。


関連リンク
新しい地図:新しい地図
稲垣吾郎 公式Twitter:稲垣 吾郎 (@ingkgrofficial) | Twitter
草彅剛 公式Twitter:草彅 剛 (@ksngtysofficial) | Twitter
香取慎吾 公式Twitter:香取慎吾 (@ktrsngofficial) | Twitter


関連記事
「SMAP×27時間テレビは紛れもなく「あの頃の未来」だった」 - 小娘のつれづれ
「テレビを背負うSMAPの覚悟」 - 小娘のつれづれ

twitter / 自分について
@drifter_2181 / 自分について

お仕事のご依頼は→ drifter_2181@outlook.jp
※お仕事以外のご相談には返信できません、あらかじめご了承ください

*1:「GIFT of SMAP -CONCERT TOUR 2012-」12/24 札幌公演

*2:ツアーDVD『Mr.S saikou de saikou no CONCERT TOUR』