「まだ東京で消耗してるの?」と言った人がいました。
わたしは横浜から北海道に越してきて、15年になります。
今30歳なので、ちょうど生きている半分をここで過ごしたみたいです。
引っ越してきたばかりの頃は、やはり色々とまどうことがありました。
東京や横浜は当たり前にけなされました。
大好きだったテレビもラジオも多くが見れなく、聴けなくなりました。
思い出の中の地名を出しただけで「都会ぶってんじゃねーよ」と返された事もありました。
でも、わたしが何より辛かったのは、私を育ててくれた風景が、そこにはなかったこと。
サビたガードレールも、ガムのついたアスファルトも、決して豊かとはいえない緑も、
でも私という人間はそこで育って、色んなことを知って、その風景は私にとって大事な、帰る場所でした。
「故郷」
15歳、その意味を噛み締めて毎晩1人で泣きました。
そして16歳になった頃、両親は2人が生まれ育った、故郷の北海道に家を建てました。
きっとこの先も、私は北海道で生きていきます。
なぜなら人生を共に歩もうと決めた人も、北海道の人でした。
この地で当たり前に私の1日は過ぎていきます。
そしてそれは、私自身の決めた人生でもあります。
でも、たまに思います。
あのまま地元にいれたら、私はどんな人間になっていたんだろう。
したかった事が沢山あった。
でも気づかなかった事もきっと沢山ある。
私は、故郷で消耗したかった。
当たり前に地元で生きてみたかった。
でも、ここにも確かに景色があります。
そして私は今、それを見ながら、毎日生きています。
「ふるさとは遠きにありて思ふもの」