小娘のつれづれ

一人で自分の”好き”を追いかけています。

「アイドルマーケットの歴史から見た「楽曲派」」

色々と読みました!

「アイドルと自意識、アイドルの自意識17 - 「楽曲派」はアイドルマーケットに貢献できるのか」(レジーのブログ)
「ラグジュアリーなアイドルソング、楽曲派狙いは現場を殺す?~弾けるネオ・ディスコ~」(What A JPoP?!)

そもそも「楽曲派」ってなんなんだべ

前述のレジーさんは、記事内で「楽曲派」の存在をこう表現しています。

アイドルというジャンルそのものに関心があるのは前提として、そのジャンルを構成する要素の一つである楽曲に特にフォーカスしてる人たち

(2014.6 / 「アイドルと自意識、アイドルの自意識17 - 「楽曲派」はアイドルマーケットに貢献できるのか」


また以前の記事を読むと、「楽曲派」という言葉の中には、こういったニュアンスも含まれているかもしれません。

アイドルネタ書くにあたって態度をはっきりさせといたほうが良さそうですね。で、指摘された「外側の人なのか現場の人なのか」という点ですが、もう完全に「外側の人」ですよね

(2012.8 / 「アイドルと自意識、アイドルの自意識2 -新しいゆきりんワールドを目指して」


この2点の前提を踏まえて話を進めますが、そもそもアイドル楽曲が音楽好きの中で音楽ジャンルとして一定の市民権を得るようになってきたのは、AKBブレイク以降のこの4~5年だと思うんですよ。
「アイドルマーケット」という言葉で見ても、少なくとも私が知ってる過去30年の中で世間的に沈黙していた時期は2回到来しています。
1回めは80年代アイドル歌手ブームが沈静化した1990年代前半、
2回めは黄金期モー娘。ブームが収束した2005年前後~AKBが初めてオリコン1位を獲った2009年頃まで。

「楽曲派」はアイドルマーケットに貢献できるのかという問いに対して

音楽的アプローチに秀でていたにもかかわらず、見合った評価を受けられなかったアイドルというのはこの10年間で区切っても、結構いるんです。
例えばSweetS
「楽曲派の牙城」と東京女子流が表現されるならば、SweetSはいわば「楽曲派アイドルのルーツ」とも言えるような存在だと思うのですが *1
じゃあSweetSが活動していた2003~2006年、音楽好きを自認する人たちがどれくらい彼女たちの音楽を認識していたかと思うと、
当時のネット上の評価、およびライブハウスにも通いながらリアルタイムで聴いていた大学生の自分の体感をもってして疑問は浮かびます。

それからメロン記念日
彼女たちは2000年のデビュー後5年ほどつんくプロデュースのアイドル楽曲を歌いますが、その後徐々に外部の提供楽曲を取り入れ、2009年には”ロック化計画”としてロックバンドとのコラボシングルを5作リリースします。

「DON'T SAY GOOD-BYE / メロン記念日×BEAT CRUSADERS」
「ピンチはチャンス バカになろうぜ! / メロン記念日×ニューロティカ」
「Sweet suicide summer story / メロン記念日×ミドリ」
「青春・オン・ザ・ロード / メロン記念日×THE COLLECTORS」
「メロンティー / メロン記念日×GOING UNDER GROUND」

「女の子が歌って踊ってればそこで鳴らされる音楽ジャンル自体はなんでもよい」という開けた音楽好きが広く成立するならこれ、2009年の時点でも思いっきり盛り上がれる題材だったと思うんですよ。
売上は「DON'T SAY GOOD-BYE / メロン記念日×BEAT CRUSADERS」が最高で1,385枚
ロック化シリーズラストの「メロンティー / メロン記念日×GOING UNDER GROUND」は755枚*2 *3 *4

そもそも東京女子流と並び、近年「楽曲派向け」の代表格としてよく名前が挙げられるTomato n'Pineに関しても楽曲派との関係に関してはちょっと気になる所があって、それは2009年から2010年にかけて、実はTomato n'PineってTSUTAYAで無料レンタル盤作ってたんですよ。

トマパイの「Life is beautiful (Short Version)」がTSUTAYAで無料レンタル!(2009.1)
「キャプテンは君だ! / POP SONG 2 U (TSUTAYA CD Rental Short Ver.)」」がTSUTAYAで無料レンタル!(2010.8)

実際私は北海道、札幌はもちろん非札幌圏のTSUTAYAでも複数の店舗でこれらのシングルが目立つポジションでしっかり平置き展開されていたのを当時確認しているんですが、2011年12月に発売された最後のシングル「ジングルガール上位時代」の売上は1,700枚*5


www.youtube.com

この流れを見てきて私が思うのは、やっぱり「いろんな音楽に詳しくて、その中の一つとしてアイドルポップスも聴くよ」っていうカテゴライズって、結局なんなんだべと。

アイドルと音楽の間に存在するもの

「アイドル」と「音楽」、その間には何が存在するのかといえば、それは結局知識や技能ではどうにもならない『イメージ』という絶対的な評価の分断だと思います。
上のSweetSやメロンやトマパイがもし知名度的に楽曲派層にリーチできなかったんだというなら、2007年にモーニング娘。が出した松井寛編曲の「笑顔YESヌード」を
既存ファンしか買ってなかった事実*6 *7はどうなるのっていう。

モーニング娘。が2007年の『笑顔YESヌード』ではなく2012年の『One・Two・Three』あたりから(音楽的側面も含め)再評価されていったのも、やはり最初のきっかけには「AKB48に対するカウンター」という部分が大いに含まれていると私は思っていて、アイドルが「楽曲に特にフォーカスしてる人たち」に見つかったのも結局音楽の詳しさや質そのもの以上に、やっぱブームによる各個人への「イメージの越境」が大きかったんじゃないかと。
そして幾度の世間的沈黙を知るアイドルマーケット、アイドルカルチャーは、一時の嗜好がもろい事も、骨の髄までよく知っている。


結局アイドルマーケットの中では音楽的文脈も接触も、イメージというアイドルの生命の一つのピースにすぎず、
だからこそここは自由で、面白い表現がばんばん生まれてくるのだと思います。

つまりのところ私は、どういうピースをもってしても行き着くところは全て1つの確かな文化であると思っているし、
それは超面白いから、後年に残すために今なんでもやりたいです。


<MUSIC STORE>

LolitA☆Strawberry in summer(CCCD)

LolitA☆Strawberry in summer(CCCD)

  • アーティスト:SweetS
  • エイベックストラックス
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PS4U(初回生産限定盤)(DVD付)

PS4U(初回生産限定盤)(DVD付)

  • アーティスト:Tomato n'Pine
  • ソニーミュージックエンタテインメント
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*1:SweetSの3rdシングル『Love like candy floss』は2011年に、デビューシングル『LolitA☆Strawberry in summer』は2012年にそれぞれ東京女子流によってカバーされています。ちなみに『Love like candy floss』は、東京女子流にとって結成後最初の練習曲でもありました

*2:ソース:「2009年度のハロプロ関連CD売上 / Clareのハロプロブログ」「2010年度のハロプロ関連CD売上 / Clareのハロプロブログ」

*3:全国のタワレコ、タワレコオンライン、メロン記念日のコンサート及びイベントの物販のみで発売。タワレコを通じた『ロック化計画コラボレーションシングル』シリーズ全購入者にはオリジナルCDケースやオリジナルPC壁紙の購入特典があった。

*4:ちなみにメロン記念日は2010年に解散するのですが、その解散ライブ後の事務所公認飲み会ではスタッフから「ロック化第5弾は9mmとか怒髪天とかあった」という話が出ていました。ちなみに怒髪天の方は歌詞まで具体的に進んでいて、「女の子が戦国武将になる歌詞書いてた」そうな

*5:ソース:「2012年11月18日 / WASTE OF POPS 80s-90s」

*6:『笑顔YESヌード』の売上は53,047、前作の『歩いてる』は55,694、記念イヤーのご祝儀買い対象シングルや握手特典を除き、この頃のモーニング娘。は大体売上が5万前後で推移

*7:あと地味に音楽ガッタスの「鳴り始めた恋のBell」も