小娘のつれづれ

一人で自分の”好き”を追いかけています。

「しらないまち」

朝起きると、自分以外の誰もその事を覚えていなかった――

これがあながち嘘じゃないのは、私が全国転勤の家の子供であったという事です。
実際、私の周囲には今SNSも含め、9歳までの私の姿を知っている友人が完全に1人も存在していません。
子供の頃の自分が、消えたんです。
それは親の転勤とともに。
再開発であっという間に取り壊されてしまった団地ともに。


お弁当を持ち寄ってみんなで食べた記憶も、人形劇を観に行った記憶も、団地の子供たちで野良猫を可愛がっていた記憶も、
気づいた時には全てみんなどこか遠くの街へ行ってしまいました。
そしてこういう人生を歩んでいて困るのは、たまに自分がどんな人間だったか、ふとわからなくなってしまうことです。
自分以外思い出せない風景で育まれ、帰る家もとっくに更地になってしまった、誰の証言も得られない現在地に、ときおり急に現実味がなくなったりするのです。
ここは一体、どこなんだろうと。

あの頃の友だちの皆さん、あれからどんな人生を送っていますか?

私は今、しらないまちの端っこで、ずっと帰り道を探しています。


街