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小娘のつれづれ

ライター / ブロガー ずっと一人で自分の「好き」を追い続けています。お仕事のご依頼はこちらへ→ drifter_2181@outlook.jp



「北海道の小さな街で聴こえた、宇多田ヒカル」

音楽の話 日常の話

北海道に住んでいるのですが、最近時間があると、よく日帰りドライブをしています。
昨日は朝に思い立って、北海道南部の日高地方を1日かけて周ってきました。


日本有数の馬産地としても知られる日高は、道央部に一番近い日高町・門別地区までで札幌から約100km、一般道で2時間30分。
私が今回訪れた中で最南部*1の新ひだか町・静内地区は札幌から約130km、一般道で3時間かかります。


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遠出の時はなるべく地元のお店に寄るようにしているのですが、お昼ご飯を探しに行ったある小さなスーパーで、その時かかっていたのは宇多田ヒカルの「花束を君に」でした。


おばあちゃん同士が雑談をし、お父さんと子供が花火を買いに来る。
そんな小さな社会の日常に、リアルタイムで溶け込んでいる瞬間を体感すると、あぁやっぱり音楽ってすごいものだなと、心から感じます。


* * *


月の初めには、こんなところにも行っていました。


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これは札幌にもう少し近い北海道中央部、空知地方の旧炭鉱街で撮った風景です。
近年では北海道米の産地として知られるようになってきた空知ですが、実はそう遠くない1980年頃まで、この地域の主力産業は石炭でした。


まだ日本のエネルギーを石炭が担っていた頃、良質な炭山を複数抱えていた空知には沢山の働き手とその家族が集まり、街を発展させていきました。
しかし1960年代に原油の輸入自由化をきっかけとしたエネルギー革命(石炭から石油へ)が起こると、石炭産業は急激に衰退。炭鉱の閉山が相次ぎ、その流れとともに人も一気に離れます。

・美唄市
1960年 人口87345人→(1963年~1964年 近隣の明治炭鉱&三菱芦別炭鉱が閉山)
1965年 人口63051人(5年間で28%減)
1970年 人口47369人(10年間で46%減)
2010年 人口26032人

・上砂川町
1960年 人口28431人→(1963年~1964年 近隣の明治炭鉱&三菱芦別炭鉱が閉山)
1965年 人口20067人(5年間で30%減)
1970年 人口15718人(10年間で45%減)
2010年 人口4094人

・歌志内市
1960年 人口38002人→(1963年 北炭神威炭鉱が閉山)
1965年 人口27744人(5年間で27%減)
1970年 人口19334人(10年間で49%減)
2010年 人口4390人

・栗沢町
1965年 人口20407人→(1966年 美流渡炭鉱が閉山)
1970年 人口14451人(5年間で29%減)
1975年 人口11708人(10年間で43%減)
2006年 岩見沢市へ編入

・三笠市
1970年 人口40553人→(1971年 住友奔別炭鉱が閉山)
1975年 人口25749人(5年間で37%減)
1980年 人口23319人(10年間で43%減)
2010年 人口10225人


※いずれも数値は国勢調査のもの



そんなに遠くない昔、この地域にはもっとたくさんの人の声がありました。
そしてその中には生活があり、娯楽があり、映画館や会館では新作映画や歌手の生ステージを鑑賞することもできました。
いつも人々のすぐ近くに、エンターテイメントのその息吹はもたらされていました。


しかし人の賑わいが消えると、街はその時を永遠に止めます。
旧炭鉱の周りには今も人の住んでいる家が少し残っていますが、炭鉱で栄えた風景は2016年の今も、私が生まれる前に作られた姿のままです。


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沢山の人で溢れていたという駅も、お店も、映画館も、もうありません。


* * *


後に知ったのですが、北海道の炭鉱街から人がいなくなり始めた1970年当時、10週連続でオリコン1位を獲得していたのは藤圭子の「圭子の夢は夜ひらく」でした。
そこにまだあった小さな社会の日常では、きっと彼女の歌を口ずさんでいた人が、いたはずです。

そして46年経った今も確かに、東京から遠く離れたこの地で、流れている音楽があります。



あの日あの時、小さな社会の日常で”彼女たちの歌”が聴こえていたこと。


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そこにあるのはきっと、偶然や奇跡ではありません。


抗えぬ時の中で、生きる人に今日が訪れた証、そして誰かの小さな思い出が昨日にあった、儚く尊いその証でした。




宇多田ヒカル lyric site


<MUSIC STORE>


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*1:正式な日高地方の最南部、えりも町は札幌から約210km、一般道で4時間30分です