小娘のつれづれ

一人で自分の”好き”を追いかけ続け、執筆業になりました。2017年に初の単著がでました(乗田綾子名義)。



2017年9月発売の『SMAPと、とあるファンの物語』(双葉社)については【こちら】

「アイドルばかり聴かないで」

昨日の「ふつうの人はCDなんてもう買わなくなった」というタイトルは、
Negiccoの「アイドルばかり聴かないで」という曲が元ネタでした。


「ふつうの人はCDなんてもう買わなくなった」
これが元ピチカートファイブ・小西康陽の言葉である意味は重い


(はてブコメントより)



* * *
* * *


ずっと応援しているファンの体感として、
あれだけ長期間見てもらえなかったモーニング娘。が
今年これだけ再注目されるようになったってのは
いまだほんと信じられないんですよ。


そのスイッチを入れてくれたのは完全に「オリコン3連続1位」。


実際ネット上では2011年くらいからだんだん再評価の動きがあって
去年もOne Two Threeの時点で相当反響はあったんですけど、
実際のメディア露出やライブ動員数まではまださほど動きがなかったんですね。


ただオリコンで3回連続1位とって、それをもってついに8月のMステで「再ブレーク」って言葉がつけられた、
そこから急激に注目度が変わり、メディア露出が跳ね上がり、大きい会場でのライブ開催も可能になり、
しまいには長年蚊帳の外だった紅白にまで、出るか出ないかというのが大きな話題になった。
(結局出れなかったけど)


世間に幅広く知ってもらうツールとして、
やっぱオリコンランキングは今だすごい力を持ってるんだって体験をしたんですよ。


* * *


ただ、散々既出だと思いますけど、
近年のCDランキングが特典ランキングに変わってきちゃってるのは誰が見ても明らかで。


私はアイドルヲタである一方、
今でもたまにバンドやるくらい音楽は好きで、インディーズバンドのライブをよく見に行きます。
音楽雑誌も読みます。
家でCSの音楽専門チャンネルもよく見ています。


ライブを見たり、専門メディアに触れてると、
やっぱ音楽って何も死んでないよなぁって感じるんです。
今も続々面白いミュージシャンが出てきてるし、良い曲沢山あるし、
音楽の言葉にならない楽しさは何も変わっちゃいない。


ただ同時に、今私がこう思えてるのは、「能動的に音楽に触れてるからだろうな」って。


オリコンランキングと音楽メディアの両方を渡り歩いててひとつ思うのは
ランキングがああいう形になりつつあって
じゃあ受動的な興味がどこに向かえばいいかなってなかった時、
多分今の音楽って、わかりやすい受け入れ先がないんですよね。
ナタリー編集長の言葉を借りると
”教室でギター練習してた1~2人”以外だって「受動的な音楽への興味」は持っているはずなのに、
それが音楽メディアに到達する前に零れ落ちた時、受け止める術が今限りなく減ってきてる。


って書くと「いやyoutubeで探せよ」とかって話だと思うのですが
受動的な興味の中ではそれさえ労力のかかる事だし、ランキングが機能しなくなってきた現状、
まず何を検索すればいいのかすらちゃんと伝わりきってない。
だから定期的に「音楽業界の出すCDが死んでるから買わなくなった」って結論を出されてしまう。


* * *


「じゃあ配信ランキングとか見ればいいんじゃね」って事になる。
実際私もアイドル以外は配信で買う事が増えてきたし、
今回の色んな反応見ても音楽購入をCDから配信に移行してる人はだんだん増えてきてる。
この子ですら「iTunesランキング」って発想が出てきた。


でも、配信販売ってamazonで買う人も多いですよね。


iTunes BEST OF 2013 トップセラーソング ランキング(BARKS)
Amazon MP3 Best of 2013 年間ランキング (Amazon)


これ、もはや能動的興味すら、今はitunesとamazonですっぱりと分かれてきてしまっているんです。


私音源買う時に、itunesとamazonどっちの方がアーティストには利益返せるのかなって思う事があって、
それはモー娘。はファンの買い支えが注目度や反響もアシストできた体験が間近にあるからなんですけど、
でもミュージシャンだと、その答えが今見つからない。


音楽ファンだってもっと聴いてほしい、もっと知ってほしいって欲求はあるはずで、
以前だったらファンがそれを幅広く伝えられるランキングに繋げることもできたから、
結果ファンの投資はアシストとなって、新しい興味や評判を呼び込む手助けができた。


でも、CDがmp3データに移行しつつある今、ファンがいくら音楽にお金を使っても、
音楽業界はランキング以外の大きな訴求方法を今だ提示できていない。


そこにはライブや物販売上だけじゃカバーしきれない部分、
何より正解のない仕事だからこそ、力になれていたはずの能動的興味がずっとあったのに、
今のミュージシャンを取り巻く環境ではそんなファンの思いすらうまく機能しなくなってきている。


* * *


CDが売れなくなってきた事で何が一番ヤバイかって、現状のままだと、
オリコンランキングと音楽ファンとそれ以外の人たちの間に
どんどん大きな裂け目ができつつあるんですよ。


もともとニッチなもの、だけどあんなに可能性を秘めてるものなのに、
三者の間で今共有する手立てが一つもない。
それどころか各自の興味すら音楽とうまく噛み合えなくなってきてるんですよ。
それは「CDなんてもう買わなくなった」、その先の返答を何より業界が今だ見つけられていないからで、
だから時間が経てば経つほど、さらに裂け目が広く深くなっていく。


…それが価値観の多様化という事なのかもしれないけど、
でも、音楽の行き先は本当にそっちでいいんだろうか?


まだ何かしたら間に合うかもしれないのに、
そして実際アイドルやボカロは今もちゃんとうまく起爆させているのに
肝心の一番フィードバックされるべきミュージシャンの音楽だけが、
その手段を持たないまま少しずつ間口を失ってきてる。


* * *


私がたまにこの手の話に熱が入るのは、もちろん自分の趣味を存続するためというのがあるけど、
自分自身が音楽をやっていた事、あとぶっちゃけ
学生の頃から音楽やってる人たちをずっと間近で見続けているっていう環境もあります。*1


趣味で音楽をやってる人はもうそれで成立してるからいいんだけど、
やっぱプロになりたい、音楽で食っていきたいっていう人には、
綺麗事と隣り合わせで「売れる」「売れない」っていう概念がどうしても存在します。
それはミュージシャンにも、才能の先に生活があり、人生があるから。


私はもちろん音楽の才能を持ってる人間ではなく、実際生き方として堅実な方面を選んで歩んでるけど、
それでも、ミュージシャンの才能を持ってる人が食えませんなんて世の中は、
はっきり言って夢がないと思う。


だから才能の周りに存在する、そして楽しんだり励まされたりしてる私たちは
少しでも才能を持つ人にきちんとした評価を返せる世の中にするために、
何ができるんだろうってっていうのは、常にずっと考えています。


「アイドルばかり聴かないで 心配してるのわかって
 アイドルばかり見てないで ねえ、わたしを見て」



他サイトの記事
「ふつうの人はCDなんてもう買わなくなった」のか(たにみやんアーカイブ)


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*1:メジャーもいるし、インディーズもいる