親衛隊文化の残響の中で
モーニング娘。がメジャーデビューし、記念すべきファーストライブ*1を行ったのは1998年7月のこと。
このファーストライブは後に『Hello! FIRST LIVE AT SHIBUYA KOHKAIDO』というタイトルで映像商品化されているのですが、このファーストライブの時点でもう、すでに客席の声援ボリュームはデカい。
日本のアイドル史をざっと整理しておくと、特に女性アイドルファンのコミュニティにおいて、いわゆる親衛隊文化が最盛期を迎えていたのが1980年代のこと。
その後、1990年代前半の日本はいろいろあって世の中的にヲタク文化への否定感が急増、アイドルファンも存在そのものが世の中的に忌避されるという「冬の時代」に突入するのですが、実はその1990年代前半にもCoCo、ribbon、桜っ子クラブさくら組といった女性アイドルグループが一定数活動してはいたので、応援文化の完全な断絶はどうにか免れています。
そして、以前ならアイドルにカテゴライズされていたであろうCMモデルや子役、はたまたアーティスト的側面が強かった沖縄アクターズスクール出身者(安室奈美恵・MAX・SPEEDなど)などの流行を経て、テレビバラエティ「ASAYAN」から偶発的に投下されたのが、1998年デビューの女性アイドルグループ・モーニング娘。でした。
つまり、ここで何を書いておきたいかというと、「おそらく女性アイドル・モーニング娘。=ハロプロライブの応援文化の下地には1980年代の親衛隊文化からの継承も大なり小なりあったと思うよ」、という。
実際、ハロプロの応援文化(ヲタ芸)に多大な影響をもたらしたロマンス(代表例:藤本美貴『ロマンティック 浮かれモード』)は1980年代デビューのおニャン子クラブ出身・渡辺美奈代『恋愛(ロマンス)紅一点』からの転用とされてますし、昔のハロプロ現場で特攻服着てるヲタをやたら見かけたのも、そういうことだったんじゃないかなとは思うんですよね。
コメントを拝見すると、ロマンスの起源については諸説あるようですが、渡辺美奈代さん起源説について、当事者からの正確な情報を記しておきます。
— おニャン子クラブ40周年ライブ 本部 (@onyanko_40th) 2025年12月4日
両腕を高く上げ、あのリズムで左右に振り分ける現在のロマンスの原型が完成したのは、美奈代さんの「恋愛紅一点」です。… https://t.co/LgiG5s2Z0A pic.twitter.com/mY9IDiqAcR
【2008年】横浜アリーナスナップ
— 東京グラフィティ (@tokyo_graffiti) 2026年2月8日
ピ〜ス!なハロプロ親衛隊スタイル pic.twitter.com/yl6uf7GUJp
「タンポポ祭り」を成立させたもの
そして周知の通り、1999年発売の『LOVEマシーン』大ヒット以降、モーニング娘。は晴れて国民的アイドルグループに。
またその勢いは、モーニング娘。を筆頭に妹分アイドルなどを全て内包した「ハロー!プロジェクト」への注目も大いに高める結果となりました。
ハロプロ合同ライブ(以下ハロコン)の東京公演は国立代々木競技場第一体育館、ハロプロ名義の大運動会はさいたまスーパーアリーナ。
常時これだったのが2000~2001年のハロプロと説明すると、当時の人気ぶりがなんとなく伝わるのではないでしょうか。
ただ、このように誰が見ても黄金期の中にあったハロプロ界隈に突然、衝撃のニュースが投下されます。
そう、俗にいうハロマゲドンです。
この一連の発表(グループの大再編)の中でもファンが一番ショックを受けたのは、モーニング娘。初の派生ユニットである「タンポポ」のメンバー大幅入替でした。
なぜならファンは皆、グループ本体ではなかなか主役になれなかった1期メンの飯田圭織が、このタンポポでの歌唱機会をどれだけ大切に想っていたかを知っていたからです。
そして、そういったメンバーの気持ちに対して、肝心の再編理由はいまいち不明瞭だったことから、ファンは大反発。
その結果、飯田矢口石川加護によるタンポポ*2の実質ラスト歌唱となった『モーニング娘。コンサートツアー2002夏 ~LOVE is ALIVE !~』にて、4人が横浜アリーナのステージに登場した瞬間、満員の客席が一斉にタンポポ色=黄色いサイリウムで埋め尽くされるというサプライズ(通称・タンポポ祭り)は実行されました。
ネット掲示板・2ちゃんねるへのファンの何気ない書き込みから見事実現へと至ったこの企画。
改めて振り返ると、当時リアタイしていた自分としても、まだSNSもないこの時代にハロヲタ/モーヲタを見事束ねていたある種の献身性は、やっぱりどこか親衛隊文化のそれが一定の土台になってた気がするんですよね。
いや、もっと言えば、古くは1970年代のキャンディーズから、女性アイドルに対する男性主体の応援文化は(男性アイドルに対する女性主体の応援文化と比較すると)献身性が強めに出る傾向がありました。
2001年のタンポポ祭りの発端となったやりとり*3も、ごく偶然ではありますが、男性主体の応援文化の献身性にうまくハマるものだったのが、今となっては非常に良かったんじゃないかと思っています。
「タンポポのとき一面黄色にしてえなあ」
生き残った者たちの声
そして、あのハロマゲドンやタンポポ祭りから数年。
モーニング娘。を母艦とするハロプロは以降も相変わらず、いつも通りの通常営業(CDリリース・ライブ・その他もろもろ)を行っていましたが、最初の全盛期に比べると人気はさすがに下降。
モーニング娘。を例にすると、グループのオリコン1位連続獲得記録が途切れるのは2004年で、その後も有名メンバーが卒業するたびに、CD売上は確実に下がっていきます。
また4期までのメンバーが全員卒業して以降は、有名歌番組への出演機会も無くなっていきました。
現役モーニング娘。がMステに最新シングルを引っ提げて出演できた*4のも、NHK紅白歌合戦に出場できたのも、2007年が最後となりました。
しかし、こうした「ハロプロは落ち目」という世間の評価に唯一抗っていたのは、他ならぬ現場のファンたちでした。
しかも2000年代後半のハロプロファンのメインは、世の流れがハロプロを見限っていく中でも決して去らなかった”全盛期の生き残り”。
男性主体の応援文化の献身性を出発点としたあの1990年代後半から、タンポポ祭りやヲタの結束による3年半ぶりのオリコン1位獲得(『歩いてる』)のような記憶もずっと共有してきた残存ファンが、この頃大好きなアイドルにしてあげられた最大の応援といったら、それはもう、クソデカいコールしかなかったんです。
Mステに出られなくなっても、紅白に出られなくなっても。
そして、後に多くの人が再評価してくれることになった「プラチナ期」の映像は、そういう時代の記録映像でもありました。
こうして、「まだハロプロってあったの」「ダサっ」*5と散々揶揄されながらも、クソデカいコールに象徴されるハロヲタの献身性強めな応援によってどうにか2010年代までの延命に成功したハロプロは、
隣のAKB登場~アイドル戦国時代到来~モーニング娘。再ブレイクから始まる念願の新規ファン獲得、
また同時期にやっと市民権を得られた男女アイドルの”兼ヲタ”やハロプロ全盛期に育った元子供たちの帰還などにも支えられ、ファンコミュニティの裾野を時流の中でマイペースに広げながら、現在へと至っています。
これから初めてハロプロ現場に来る、特に若い女性ファンの方へ
ハロプロにはこうした歴史的経緯から、現場にはクソデカコール=愛情表現という一定の共通認識があります。
なんならメンバーサイドにもそれはあります。
というかこないだも某OGから「それがメンバーのパワーにもなるし嬉しいっちゃんね!」(ソース:インスタ)との激励をいただいたばかりなので、ハロプロ現場は今後も変わらず、元気にクソデカコールを追及し続けることでしょう。
もし、あなたに大きな声が苦手などの個別事情がある場合、ハロプロには着席指定&コールの中心からは少し離れる「ファミリー席」というライブチケットの選択肢もあります。
他の女性アイドル現場と比べると、ハロプロでは確かに「なんか年季の入ったおじさん多くない?」と感じることもあるかもしれませんが、大半のおじさんはルールを守り、そしてあなたと同じように、かわいくて強くて最高なアイドルを心から応援したい気持ちで現場に来た仲間なんだってことを、どこかでふと思い出してくれたら嬉しいです。
※最後に
当記事はライブ空間における、周囲への著しい迷惑行為を肯定する意図はありません。
お風呂は入ろう!服は洗濯しよう!
サイリウム派も振りコピ派も怒られないコツは肩から内側の範囲で動くことです!
※おまけ
ちなみにハロプロ現場の歴戦のおじさんたちとバカデカコール史について、公式ライブDVD以外の関連資料映像はこちらになります
— 小娘/乗田綾子 (@drifter_2181) 2026年2月19日
①2003年・ベストヒット歌謡祭 島谷ひとみ『ペルセウス』https://t.co/RUGGdsgZWv
②2008年・MilkyWayデビューライブ SHIPS『TOKYO FRIEND☆SHIPS』…
あとこれは半分公式みたいな領域ですが、後藤真希のavex移籍後はしばらくの間「イメージを下げてはいけない」と現場参加を自重していたおじさんたちが、活動休止前のラストライブにはついに大勢かけつけて、全力で『スクランブル』のコール打ったのは本当に大好き
— 小娘/乗田綾子 (@drifter_2181) 2026年2月19日
④2012年・G-Emotion FINAL…
関連リンク
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