小娘のつれづれ

一人で自分の”好き”を追いかけています。

「私はハロプロを聴いて「強い女になりたかった」のか問題」

今日、ふと思い立ってモーニング娘。の『SONGS』を再生した。
iTunesの履歴では最後が2016年12月になっているので、なんと約8年ぶりの再生である。
しかしそれだけ時間が空いても、あのイントロが流れた瞬間から、歩くリズムが自然と曲の速さに重なる。
たぶん8年前の私も同じ速さで歩いていただろう。
ただひとつ、聴き終わった後の自分の気持ちには、まったく予想外の感想が残っていた。
「わたし、強い女になれてたんだ」と、その時初めて気づいたのである。


かつて私が『SONGS』を一番聴いていたのは、収録アルバムが発売された翌年の2010年だったと思う。
その頃の私は20代半ばで、仕事が変わったばかりで不安で、だから職場につくギリギリまで、iPodに入れた『SONGS』を繰り返し再生していた。
ただ、私の場合、その行動は「強い女になりたい」からではなかった。
楽曲と同じくらい覚えているのは、時間がきて再生をプツンと止める瞬間の覚悟じみた決心、そしてドアノブに手をかける指の冷たさだ。

そう、次の瞬間にそのドアを開けたのは、強くもないし自信もない、そんな27歳の私自身だったのである。
結局、強かろうが弱かろうが自信があろうがなかろうが、ドアを開けるのはモーニング娘。ではなく、いつも私だった。



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30代になった私もモーニング娘。を聴いて感激したり奮い立ったりしながら、それでも直前には再生を止めて、自分で目の前のドアを開けていった。
ただ、30代の私には、あれだけ大好きだったモーニング娘。の楽曲が一切聴けなくなった時期もある。
きっかけは、モーニング娘。楽曲の主人公たちがキラキラと語るママに、私はなれないと繰り返し突きつけられたことだった。
30代の私はその現実からずっと逃げたくて、逃げられなくて、苦悩しながら、でも最後にはちゃんと自分の意思でドアを開け、心身をめいっぱい切り刻んだ。
そして今のところ、残っているのはたった一週間の思い出だけである。
「あぁ、私ついに『まじですかスカ!』の主人公が夢見てたような、キラキラした未来には辿り着けなかったんだな」

だけど、結局はかつて縋っていたゴールラインの先で、40代になった私はなんだかんだ生きている。
むしろ、以前よりグッと生きやすくなった感じさえしている。
なぜなら一人でドアを開けて、限界まで真っ黒な絶望の淵を覗き続けていたら、私はやっと生まれて初めて、自分という人間の強さを信じることができたのだ。

そして、今日8年ぶりに『SONGS』を聴いて、今の私だからこそ、気づけたこともあった。

私は『抱いてHOLD ON ME!』が大好きだった中学生の頃の私や、『シャボン玉』を聴きながらバイトしていた大学生の私と同じように、やっぱりモーニング娘。に強さや救いは求めていない。
スーパーヒーローじゃなくていい。
同性や時流に目配せなんてしないでいい。

ただ、心から、モーニング娘。には好きな歌を歌い続けていてほしい。
行きの電車の中で、帰りの雑踏の中で、ひとつひとつの人生に、ずっと歌いかけていてほしい。

生まれた時代や年齢が違っても、歌うメンバーが変わっても、歌声は途切れぬ限り、出会う人の現在と未来をいつだって一つに繋ぎ合わせてくれる。
モーニング娘。が歌い続けている限り、モーニング娘。の楽曲もまた、過去にはならないのだ。
女性アイドルのエンターテインメントとして、それがいかに凄いことか。
27年並走して、やっと知ることもある。


帰りの電車の中、AirPodsから流れてくる『ENDLESS SKY』に耳を傾けていたら、線路が大きくカーブするあたりで窓の外、厚くて昏い雲の隙間から遠くの青空が見えた。
その青さは、まだ何も知らない10代の私がMDプレイヤーで『ザ☆ピ〜ス!』を聴いていたときに見えた、抜けるような夏の青空と何も変わらないことを、今の私は知っているのである。



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