高橋留美子特集のダ・ヴィンチ12月号を購入。
生まれて初めて読んだ漫画が、幼稚園の時、うる星やつらでした。
そして私が一番最初に好きになったキャラが、「三宅しのぶ」です。
* * *
彼女はご存じのとおり、主人公でも、マドンナでもありません。
というか読切で掲載された当初はマドンナだったのですが、
ゲストキャラだったはずのラムが予想以上に人気を博したため
連載開始時にはヒロインのライバル的ポジションに、
そして個性的なキャラクターがどんどん増加すると彼女はさらにその他大勢に紛れていき、
中盤以降は安定の「クラスメート」というポジションでストーリーに参加します。
そりゃそうだよという話で、彼女は異星人でもないし、色気に溢れているわけでもない。
人よりちょっと怪力ではありますが、基本的には普通の女子高生なのです。
それが、すごくよかった。
彼女はいつも、個性溢れる人たちの外側にいるんです。
ラムが教室で騒ぎを起こす時、しのぶはクラスメートの女子と愚痴をたれている。
誰かが教室の机を爆発で吹っ飛ばした時、しのぶはすすにまみれた机を淡々と戻している。
それはこの多様な世界において、平凡に毎日を歩んでいる自分の姿でもある。
劇画に影響を受けた高橋留美子の当時のタッチが
昭和の時代背景と重ねてSFの世界観に突出した生活感ももたらしていた中で、
特に一番「自分」に近かったのが、友引町に住む普通の女子高生、三宅しのぶだった。
…という所までもちろん当時5歳の私が考察して読んでたわけではないんですけど、
それでも当時の感覚「あんま目立ってないから」という言葉に由来して、
私は最初からずっと、しのぶが好きだったんですよね。
漫画を読み合わせるという”うる星やつらごっこ”をする時は
いつもしのぶの役を志願していたのを覚えています。
しのぶ全然セリフないんだけど。
* * *
マドンナから「普通の女の子」になったしのぶは、
その後たまにフィーチャーされる回はあるものの
基本的にはいつも損を被っていました。
っていうか一番はとにかく男運がなかった。
ヒロインのラムは少しずつあたると心を通わせ、
個性的な性格のサクラにだってつばめという素敵なフィアンセができたのに、
しのぶにはいつも怪物か、キツネしか寄ってこなかった。
(彼女自身も途中で「あーあ、まともな男の人、道に落ちてないかしら」と愚痴る場面がある)
しかし、物語の後半で、彼女は運命的な出会いをします。
運命製造管理局員、因幡。
この人ももちろん、あの世界におけるスタンダードの「変な人」でした。
まず見た目がおかしい。
うさぎだ。
しかし他の登場人物と一線を画していたのは、
彼はしのぶを好きになった。
特殊能力や類い稀なる美貌が飛び交うあの世界で、「普通の女の子に恋をした。」
そしてしのぶも、素直に自分を愛してくれる因幡にだんだん魅かれていく。
人によってこの漫画の好きな回は全く違うのだけど、
私は、やっぱりしのぶと因幡さんの話がすごく好き。
普通の彼女が好きな人と心を通わせていく、
あそこには一番近い「幸せ」があるんですよね。
* * *
というような事に未就学児で感動すると、このように人生をかけて
個性溢れる人たちの外、「サブポジション」を愛でていく人間が一人出来上がります。
目立つ真ん中から少し後ろに見えるポジション、そこにいるのは、
いつも私たちにちょっとだけ近い人たちなんです。
だからその人が幸せな時、私は人一倍嬉しい。
しのぶさーーーーーーん!!これからも大好きだあああーーーーーーっ!!
「ぼくなんかにつきあってくれて、本当にありがとう。」
「な、なにいってんの。あたしだって…」
「ど、どうしたんですか。」
「うれしいの。うれしいの。」
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