小娘のつれづれ

一人で自分の”好き”を追いかけています。

「細かすぎて伝わらないSMAP21thアルバム『Mr.S』レビュー」


Disc1 Mr.S (colorful)

01.Theme of Mr.S (colorful ver.)
作曲・編曲:太田健

02.Mr.S-SAITEI DE SAIKOU NO OTOKO-
作詞:麻生哲朗 作曲・編曲:市川喜康・マシコタツロウ・ha-j

アルバム名がタイトルに入った、今作のリード曲になります。
過去のSMAP曲にありそうで、でもやっぱり今までなかった部類の曲なんじゃないかなー。
年下でも同年代でもなく、「年上の男性」としてリスナーをエスコートできるようになってきた、そんなSMAPの表現がこの曲にはあります。

この楽曲は今アルバムで唯一ミュージックビデオが制作されていますが、 *1
初回限定盤orスペシャル限定盤のDVDでのみ視聴可能となっています。
大人なSMAPの世界に足を踏み入れたい方はぜひそちらをどうぞ。

03.無我夢中なLIFE
作詞:木村友威 作曲:和田昌哉・妻夫木崇次 編曲:中西亮輔

謎の多い『Mr.S』から一転、こちらはいかにも「THE SMAP!!!」というアルバム曲になっています。
(『SUMMER GATE』的位置づけという説明だけで大体のニュアンスが伝わるはず)
でも2003年の『SUMMER GATE』は歌詞がストレートなアイドル曲に仕上がってるのに対し、2014年の『無我夢中なLIFE』は頻繁に「うぉううぉううぉううぉう」言ってるのが楽しい。
ちなみに作詞の木村友威さんは女性の方だそうです。

「『無我夢中なLIFE』は、曲に関する要望も特になかったため、木村さんの思いをストレートに注いだ曲という。
求めれば世界は動き出す、自分に限界をつくるのでなく、理想や夢をイメージして、1度きりの人生を前向きに生きようというメッセージを込めた」
わかやま新報 / 2014.9.3)

04.藍色のGANG
作詞・作曲・編曲:和田唱

トライセラトップスの和田唱による草なぎ剛ソロ曲。
39歳(2013年)からギターを始めた草なぎ剛をイメージし、
2014年4月発売のシングル曲『ココカラ』やバラエティ番組「ぷっすま」の企画で縁が生まれた和田唱が制作しています。
藍色はもちろん”ジーパン”、そして味付けは草なぎの好きな”50年代ビンテージ”。
ちなみにこの曲に限らず、ミュージシャンの提供楽曲はコーラスでたまに提供者本人の歌声が確認できるのが好きです!
(似たような理由で作曲:堀込高樹、編曲:冨田恵一の『愛の灯 〜君とメリークリスマス〜』のコーラスワークも、ものすごいそれっぽくて好き)

05.アマノジャク
作詞・作曲:川谷絵音 編曲:鈴木Daichi秀行

ゲスの極み乙女。/ indigo la Endの川谷絵音提供曲。
ものっそい今のバンドのメロディライン。そして聴くとわかるのですが、この曲、全編5人のユニゾンです。

…この事を考えた時、まぁ一般的に思いつくのは”歌唱力”とかそういう単語だと思うのですが
それ以上に最近のライブバンドの流行でもある「BPMの高速化×独創的なメロディライン」を日本でおそらく一番普遍的な歌声に当てはめたとき、「その答えが全編ユニゾンだった」、というセンテンス。

ちなみに歌詞の方も、「君」や「僕」の存在感はどちらかというとバンド風味。
だからこそアイドルグループSMAPの楽曲としては新鮮味があるし、興味深い味わいが残ります。

06.One Chance!
作詞・作曲:森山直太朗・御徒町凧 編曲:清水俊也

木村拓哉ソロ曲。「HERO」の第1話でも共演した森山直太朗に、木村拓哉がダメ元で楽曲提供を打診したところ1週間以内に2曲もってきてくれるという出来事があり、そこで選ばれたのがこの『One Chance!』だそうです。
これはなんかもう、本人の言葉をそのまま読んでもらった方がいいんじゃないか。

「”光合成”っていう好きな言葉が入ってて嬉しい。レコーディングではサビで涙腺1コ手前の回路がグッときてヤバかった」
「思い込みかもしれないけど、俺に寄せて詞を書いてくれたのかな?って気がするんだよね。
 歌詞の内容が今の自分にハマってて。聴いてくれた人がどう感じてくれるか楽しみ」

(週刊ザ・テレビジョン 2014 No.36)

07.Joy!!
作詞・作曲:津野米咲 編曲:菅野よう子

もはや説明不要かと思いますが、2013年に発売されたSMAPの50thシングル。

今改めて思うのは、この『Joy!!』という曲が、数えきれないほど発表されてきたSMAP楽曲の中でどれだけ異質で、新境地だったかということです。
過去の曲をずーーっとかけっぱなしにして最後にこの曲を聴いた時、そこで鳴っているSMAPの世界って、ものすごく衝撃的。

08.DaDaDaDa
作詞・作曲:さかいゆう 編曲:宗像仁志

「稲垣・草なぎ曲」と聞くとちょっと身構える方もいるかもしれませんが…そんなことないよー!!
Alone in the Rain』とかと全く違いますよー!!まさかのダンスナンバーです!!

Yes we are』や本人の『薔薇とローズ』を聴いているとさかいゆう=スローテンポみたいなイメージをもちますが、元々さかいゆうってグルーヴ感もとってもシビれる人ではないですか。
私『サマーアゲイン』とても好きです。

で、そんな人がSMAPのダンスナンバーを作ると、こんな最高の曲になる。
「君はOL そしてPG(Party Girl) 昼と夜使いこなすFG そうFly Girl Funky Glamorous…」
と草なぎ剛がラップ畳みかけるくだりなんてもう可愛くてさらにかっこいいーー!!!!
この曲に限っては女性アイドル、特にラップジャンルを愛する紳士たちにもぜひチェックしてほしいと願います!
「4つ打ちの魔法に身を委ねて」とか、女性アイドルでも間違いなく絶賛されるフレーズ。

09.ビートフルデイ
作詞:大竹創作 作曲:☆Taku Takahashi 編曲:Mitsunori Ikeda & ☆Taku Takahashi

イントロだけ聴くと過去のSMAPアルバム曲にありそうな感じしますが、実は意外にあんまりかぶってない。
SMAPのポジティブダンス』とも違うし、『はじまりのうた』のような優等生でもない、
はたまた『Going Over』までかっこいい方面に針が触れてるわけでもなく。
しいていえば意外に一番近いのが『ジャラジャラJAPAN~for the Japanese~』かもしれません。
2000年に「楽しやJAPA~N!!」と歌っていたあたりのSMAPが2014年まで進化した感じでしょうか?
時折志村イズム(いっちょめいっちょめ)も入ります。そして歌います。「憂鬱は明日にしようヒップだね!」

印象的なのが途中で中居正広からスタートする言葉遊びパートですが、公式イメージこそ「音痴」で安定している人ですけども、実はこの人、もんのすごくリズム感がいい人です。
SMAP全体の曲でも、よく聴くとリズムの取りづらい入りの所にさりげなくパートが割り振られていたり、生歌でも意外にリズムだけはずーーっと外さないのが中居正広。
(そしてリズム感が抜群だからトークのテンポも抜群=あれだけ司会ができるんだと思う)

個人的にはこの曲が今作における「歌手・中居正広」一番の聴きどころだと思います。
それ万々歳!それ万々歳!

Disc2 Mr.S (monochrome)

01.よわいとこ
作詞・作曲:広沢タダシ / 編曲:本間昭光

木村・稲垣曲。そして私、この曲の歌詞がすごく好きです。

多分これ以前のSMAPだったら、もう少し上から目線で届いてた歌だと思うんですよ。
でも歌ってる2人が40代になった事で、「僕と君」の表現がさらに柔らかくなった。

うーん、この曲に限っては、これ以上何か言葉でうまく表現できる気がしません。
一つだけいえるのは、30歳の私は疲れてる時にこれを聞いたら間違いなく号泣するだろうという事です。

02.やりたい放題
作詞・作曲:大竹創作 編曲:CHOKKAKU

シャレオツ』の大竹創作が作詞作曲ですが、編曲があのCHOKKAKU。
もーーーーーのすごい王道SMAP曲!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
特にちょっと斜に構えてる路線のSMAPが好きな方は間違いなく射抜かれる楽曲です!!
でもところどころのワードが大人上品なのが2014verのSMAP。

そしてこの曲は、地味にこのアルバムの「裏リード曲」ポジションじゃないかと思っているのですが、理由は後述。

03.Mistake!(アルバム・ヴァージョン)
作詞:いしわたり淳治 作曲:HIKARI 編曲:川嶋可能

2013年2月発売のシングル曲『Mistake!』のアルバム・ヴァージョン。イメージ的には「リアレンジ」の方が近いです。

実は私はシングルverの『Mistake!』はあんまり得意じゃなくて、というのは今の年齢のSMAPがこういう恋愛の曲を歌うと、ちょっと生々しく聴こえすぎてしまう感じがあるんですよね。
同じ恋愛ソングの『ダイナマイト』が生々しく聴こえなかったのは、当時のSMAPがギリギリ「男の子」としても成立していたからで、
もはや立派な「大人の男性」になったSMAPがこういう直球の恋愛ソングを歌ってしまうと、どうしても濃くなりすぎてしまう。
そういう部分で、SMAPより6~11歳年下の私は、ちょっと遠巻きに関わってしまう部分がありました。

…しかし今回のアルバム・ヴァージョンはその辺のねちっこさが見事にホーンアレンジによって昇華されていて、すんごい聴きやすい!
Mr.Sのアー写くらいのオシャレでライトな大人感に変化してます。というか確変レベルかこれは。
もし同じようにシングル『Mistake!』がちょっと苦手だった人がいれば、ぜひ一度聞いてみて欲しい作品。

04.SKINAIRO
作詞:SALU 作曲:Taka“North Pole”Nakamoto 編曲:Taka“North Pole”Nakamoto・MANABOON

香取慎吾のソロ。ずばりラップです。
ていうか昔からずーっと思ってるんですけど、もう少し香取慎吾のラップは評価されてもいいのではないか……
Battery』とか『This is love』があれだけ締まった曲になってるのはこの人がかっちりラップを入れられるからこそだし、
FIVE RESPECT』や『CRAZY FIVE』の大サビがあれだけ盛り上がれるのは
この人のラップがリーダー前に位置取りしてる事で加速できるというのも大きいし *2
17歳の時点で『M・A・S・H』のあの出だしパートが出来ていたこととかもうちょっと知ってほしいです。
(他にも『Let's go to 週末へヴン』とか『Scarface Groove』とか『Subway Kids』とかとかとかとか)

…えーと本題に戻るとこの曲には、香取慎吾が自分のソロ曲について考えていた時にテレビから同じアーティストのPVが流れてくるという偶然に2回遭遇し、直感で楽曲提供を依頼してみたらそのアーティスト、SALUは「SMAP結成の1988年に生まれていた」、というエピソードがあります。
インタビューで「「オーシャンズ11」の舞台に立ってた時期」という発言があるので、たぶんその時期MTV見てたんじゃないかなーと思います。

「同じ年同士、君が生きてきた時間を書いてくれたらどこか重なるんじゃない?ってお願いしたら、一行目から感じましたね。
 ”時代と時代の狭間に生まれて”って、まさにSMAPがそうだなって。」

(週刊ザ・テレビジョン 2014 No.36)

05.The Future
作詞:Leo Imai / 作曲・編曲:Koji Nakamura・森俊之

木村拓哉曰く「うちらがやって大丈夫?ってくらいデジタルな音」
確かに最近増えているデジタル路線の中でも、最上級の実験感があります。

多分これが成立するのは、SMAPのライブはドームクラス前提で作ることができるからで、そう考えるとある意味選ばれた人しか立ち入る事ができない未来のライン。
でも音源前提で聴いても、意外にやみつきになるポジションです。
これを最初や最後じゃなく、”最後のちょっと前”に置くことができる今のSMAPってやっぱバランスいいと思う。

06.Dramatic Starlight
 作詞・作曲:TK 編曲:CMJK

稲垣吾郎ソロ曲。かつてカーディガンズの『Carnival』をカバーしたり、フィッシュマンズから楽曲提供を受けたりと
SMAPの中でも実は結構バンドサウンドを愛聴しているメンバーがこの人なのですが、
今回は本人たっての希望で、凛として時雨に楽曲制作を依頼。*3
そしてなるほど、相性がすごく良い。
これもやっぱり、本人の言葉を一部引用します。

「カラーとしてはダークで、音は結構ひずんでますね。」
(月刊ザテレビジョン 2014 10月号)

「でもスローな曲やソフトな曲の方が圧倒的に得意だと自負している僕のボーカルを、ダンサブルで高いキーっていう彼独特の曲調に合わせるのがもう、難しくて!」
「ある意味、自分が一番やりにくいところに挑戦した感じでした」
(週刊ザ・テレビジョン 2014 No.36)

※9/27追記 こちらの感想もすごくオススメ!
→「Dramatic Starlightと稲垣吾郎の2次元性」(astro412’s blog)

07.好きよ
作詞・作曲:川谷絵音 編曲:鈴木Daichi秀行

こちらもゲスの極み乙女。/ indigo la Endの川谷絵音が提供。
そしてこちらは『アマノジャク』と違い、ストレートな仕上がりのラブソングになっています。

この曲の特徴はなんといっても「女性目線」の曲であるというところなのですが、
以前95年の『感じやすい不機嫌』が発表された際に、SMAPが”初めて女性目線の曲を歌いました”と言っていた記憶があります。
あれから約20年経って、今やすっかり繊細な女心を表現できるようになっているSMAP。
もしかしたら、これが一番SMAPの成長を感じられる楽曲かもしれません。

08.Theme of Mr.S(monochrome ver.)
作曲・編曲:太田健

* * *

特に『世界に一つだけの花』の大ヒットを転換点として、アイドルグループSMAPの音楽は次第に、愛や平和を広く伝えるものへと移行していきました。
それは彼らが30代へ突入するタイミングとも重なっており、”国民的”を背負った30代のSMAPが「何を表現していくべきなのか」、それと対峙した時、ああいうメッセージに向かったのはやはり自然な流れだったのではないかと思います。

そして全員が40代になろうとしている今、もしかするとSMAPの音楽は再び大きな転換期を迎えているのではないでしょうか?
実際、メンバーが40歳を迎え始めた2013年からのSMAPシングルは、それまでの路線と大きく向きを変えてきています。
その号砲となったのは多分2013年12月発表の『シャレオツ』。
一般的にはその直前の『Joy!!』の方が記憶に新しいと思うのですが、今アルバムでは各媒体で取り上げられた川谷絵音(ゲスの極み乙女。/ indigo la End)の他に、
実は『シャレオツ』を手掛けた大竹創作(乙三)の楽曲も2作収録されているのです。

今回のアルバムに関するインタビューで、香取慎吾がこんな話をしています。

「『007』(95年)ともかぶらないようにしてます。
『007』に引っ張られずに、今の年齢になった僕らが作るアルバムにって」

(月刊ザテレビジョン 2014 10月号)

SMAP 007』と言えばそれまでのジャニーズアイドルのイメージを根底からひっくり返したSMAPの名盤ですが、90年代SMAP路線への原点回帰のようでもあった『シャレオツ』があり、『007』の名前が上がり、
そして実際に大竹創作の手がけた楽曲が複数、要所のポイントを抑えているという事実。

この作品にはおそらく、40代に突入した「今後のSMAPのヒント」がいくつも隠されています。

…それを考えると、今回のタイトルにもなっている謎が多い噂の男『Mr.S』は、もしかしたら40代に差し掛かった「5人の表現者の未来のかたち」、なのかもしれませんね。

『あの子のハートを奪った Mr.Sは…誰のこと?』

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*1:シングル化されている作品は除く

*2:メンバー紹介曲ができる前から、この人はメンバーソロダンスパートの生の煽りが抜群によかった

*3:凛として時雨は過去に「Joy!!」のカップリング『掌の世界』を提供