小娘のつれづれ

一人で自分の”好き”を追いかけ続け、執筆業になりました。2017年に初の著書『SMAPと、とあるファンの物語 -あの頃の未来に私たちは立ってはいないけど-』(双葉社)がでました。



2017年9月発売の『SMAPと、とあるファンの物語』(双葉社)については【こちら】

「アイドルは、生きている」

先日、こんな記事を書きました。


「つんくのコメントで振り返る道重さゆみの11年 その1(加入~吉澤ひとみ卒業まで)」
「つんくのコメントで振り返る道重さゆみの11年 その2(プラチナ期)」
「つんくのコメントで振り返る道重さゆみの11年 その3(9期加入~リーダー就任まで)」
「つんくのコメントで振り返る道重さゆみの11年 その4(再ブレイク~卒業発表まで)」


なぜこのような更新をしようと思ったかというと、
卒業発表以降、「キリストを超えた(?)道重さゆみの犠牲的精神」など
一部で道重さゆみの神格化が加速している事に、
正直ずっと違和感を感じていたからです。


* * *


<最初はむしろマイナスから始まった道重さゆみ>


今でこそ唯一無二の存在感を湛えている道重さゆみですが、
グループにとって加入直後の彼女は、むしろ赤点の要素の方が多いメンバーでした。


それはモーニング娘。がボーカルオーディションから始まっているという点。
結成メンバーでもあり近年ミュージカルで評価を高めつつある安倍なつみ、
ハロプロ在籍時からプロダンサーを従えてライブパフォーマンスを行っていた後藤真希、 *1
在籍時からその卓越した歌唱力が注目され、卒業直後に帝国劇場の舞台に立った高橋愛など
歴代のエースメンバーを見ても、モーニング娘。はやはり音楽畑のアイドルグループだと思います。


その中で、同期の田中れいなはデビューシングル『シャボン玉』でいきなりセンターに選ばれ、
亀井絵里も加入3作目の『愛あらばIT'S ALL RIGHT』で早々にソロパートを勝ち取っているのに、
道重さゆみは加入6作目の『涙が止まらない放課後』まで、ソロらしいソロがなかった。
もちろん、加入当初から可愛さでは群を抜いていて、
加入数か月でソロのレギュラー番組を持つなど一定の活躍はしていましたが、
モーニング娘。としてのメイン、楽曲披露の場になると、道重はとことん目立たない。


グループでのテレビ出演時、カメラがソロパートを歌う高橋愛、田中れいななどに沢山寄っていく中で、
もっぱら「叫び担当」「吐息担当」であった道重さゆみが、どれだけ映っていたか。
彼女がモーニング娘。に加入してからのソロパートは、シングル27枚をかき集めてもたった1分48秒しかありませんでした。



* * *


<モーニング娘。としても、遅咲きだった女の子>


モーニング娘。に憧れていた少女は、加入後に歌割でグループの現実を感じつつも、
自身が憧れた”日本のトップアイドル”の姿に早く追いつきたいと日々歌やダンスを頑張っていました。
そんな彼女に、ある転機が訪れます。


 バラエティで一人で外へ出て行ってみたら、すごい現実を知ったというか、
 「あ、今のモーニング娘。は全然知られてないんだな」っていう。


 ファンの方は知って下さってるけど、世間の方だったりとか同じ芸能人の方とかも
 「今のモーニング娘。って誰がいるの?」とか、「誰がリーダーなの?」とか。
 「あぁそういう事全然知らないんだ」って事を初めて知って、
 そこからバラエティに出るに当たっての意識が変わって。


  (NHK 「モーニング娘。55スペシャル!」)


ソロでバラエティ番組に出演し、
そこでかつて自身が憧れたモーニング娘。が「知られてない」存在になりつつある事を悟った彼女は、
ある目標の為に、あえてナルシスト・毒舌キャラを全面に押し出し、嫌われ役を買って出ます。


 「性格が悪く思われても、それをキッカケにモーニング娘。を調べて知ってもらえたら」


  (Top Yell 2012年 5月号


当時の道重は努力こそしていたものの、歌は言わずもがな、
ダンス面でもライブ後半になると体力が追い付かず
グループの根本であるライブパフォーマンスの向上に寄与しているとはいいがたいメンバーであり、
本人も自身の立ち位置にずっと悩んでいました。
しかし自らの意志で憧れと決別し、「今のモーニング娘。」として生きる覚悟を決めた彼女は、
そこで同時に、「モーニング娘。の道重さゆみ」としても唯一無二の自分を見つけます。


そして、ついに自分を見つけた一人の女性の姿を、「モーニング娘。」として、
プロデューサーのつんくはこんな形で表現しました。



 ようやくキャラが固まったわ
 時代が私に追いついた
 少し出し惜しみしましょうか
 イケイケで行きましょうか


「ようやくキャラが固まったわ」
道重さゆみがモーニング娘。でそんな歌を歌う事ができたのは、
彼女がモーニング娘。になってから、7年目の事でした。*2


* * * * * *


<今の道重さゆみを作ったものは何か>


「神」や「犠牲的精神」の言葉を持ち出し、今の彼女を表現している人は、
何か大事な所をすっとばしているように思えてなりません。
道重さゆみという人は、普通の女の子でした。
モーニング娘。が大好きで、でも歌がちょっと下手な、山口県の普通の女の子でした。


今の道重さゆみの姿、それは
一人の人間が自らの青春をかけ、悩みや苦しみと対峙しながら懸命に生きてきたその結果です。
今の彼女を輝かせているもの、それはむしろもっとも人間らしい、
「人が生きていく」という点での美しさです。


そして今の道重さゆみを神に例えている一部の人は、
もう1つ、大事な所を見落としています。
それは彼女の一番近くにいる”道重以外のモーニング娘。”の存在。
若い彼女たちは今まさに、自らの青春をかけて懸命に生きている。


* * *


道重に限らず、近年の女性アイドルは神に例えられる場面が多くなっています。


しかし、エンターテイメントとしての側面以上に、存在そのものを「神」として表現してしまうのは
やや行き過ぎてしまっているように思えてなりません。
恋愛禁止以上の内面を求める事は、果たしてアイドルの支えになるのでしょうか?
偶像の先には一人の人間が存在しているという事を、私たちは絶対に忘れてはいけない。



彼女たちは、生きている。
そしてこれからも、生きていく。



関連リンク
キリストを超えた(?)道重さゆみの犠牲的精神(WEBRONZA)
前田敦子はキリストを超えた(筑摩書房)

関連記事
「テレ東音楽祭の9分でわかるモーニング娘。の進化」
「 #道重さゆみ生誕祭」
「いつも笑顔がそばにあった」

その他人気記事
「人気記事のまとめ」

twitter / 自分について
@drifter_2181 / 自分について

*1:ちなみに後藤がハロプロ在籍時に開催された「後藤真希 LIVE TOUR 2006〜G-Emotion〜」において、バックダンサーを務めていたのが現在EXILEのNAOTO

*2:『女子かしまし物語 2009秋ver』